2013年5月23日木曜日

複製絵画貸し出し

Ariel & Taeping 

 新潟市立西川図書館は「複製絵画」の貸し出しを行っている珍しい図書館です。ときどきホールや館内に展示されているのを見ながら、「借りてみようかなあ…」と思いながらも、なんとなく面倒な気がしてこれまで臆していたのですが、先日カウンターの司書の方に勧められて、初めて1枚の絵を借りて帰りました。
カタログを見せていただいて、真っ先に目についたのが帆船の絵でした。私は無類の帆船好きなのです。ひところ「帆船小説」を片っ端から読んでいました。
「お待ちください」と言って司書の方が奥から出してくださったものを見てビックリ仰天。カタログには絵の大きさもちゃんと書いてあったのに、よりによって一番大きな絵を選んでしまったのでした。ふうふう言いながら司書の方が運んできてくださったのを今さら取り替えてとも言えず、畳半畳ほどもある絵をかついで帰ってきました。
玄関に年がら年中掛かっている春の角田山を描いた小さな水彩画をはずして、この立派な絵─モンタギュー・ドーソンの「エリエル号とタッピング号」をドーンと靴箱の上に立てかけました。(荷重が心配でフックには掛けられず。)波しぶきを上げて走る帆船の絵が、金の装飾の施された額縁に収まっています。すごい迫力です。
毎日玄関を出入りするたびに、この絵をニンマリ眺めていたのですが、この競い合うように走る2隻のクリッパー帆船を見ているうち、以前読んだ小説を思い出しました。ジョン・メイスフィールドの『ニワトリ号一番乗り』(福音館書店)は、茶貿易が盛んだった19世紀、イギリスの帆船が中国から新茶を積んでロンドンに真っ先に届けるために競争をする物語です。この物語はフィクションですが、もしかするとこの絵に描かれている帆船は実在したのではないか…とふと思い、調べてみました。
やはり、Ariel Taeping という2隻のクリッパー帆船は実在し、1866年に茶貿易競争(Tea Race)で接戦の大レースを繰り広げ、タッピング号がエリエル号よりわずか20分早くロンドンに到着したという逸話が語り継がれているようです。改めて絵を見ると、並走する2隻が死闘を繰り広げているかのような迫力があります。
なんで図書館で絵なんか貸し出すんだろなあ…と実は怪訝に思ってもいました。しかし1枚の絵もまた「本」につながっていくものなのですね。実は「エリエル号」と聞いて真っ先に思い出していたのは、リチャード・ケネディの『ふしぎをのせたアリエル号』(徳間書店)という児童書です。この本は子ども向けにしては4,5センチも厚さのある大冊なのですが、ぐいぐい読ませるハラハラドキドキの冒険物語で、かつて私が勤めていた小学校では3年生以上の子どもたちに大人気でした。この船の名前も、もしかすると、わずかの差で敗れたことでかえって勇名をはせたAriel からとったのかも知れないなあ…などという想像もしながら、1枚の絵をたっぷりと楽しみました。
(2012年6月記)

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