2014年2月17日月曜日

小さい図書館

 先日、新潟市立西川図書館協議会のメンバー3名で、西蒲区、南区の図書館・図書室7か所を回ってきました。4000㎡を超える大きな図書館から、公民館の一室に設けられた小さな図書室まで、さまざまな形態の図書館を見ましたが、使い勝手や特色がそれぞれ違っていてとても面白く、思いがけない「お楽しみツアー」となりました。
 回った図書館は西川図書館、巻図書館、岩室図書館、潟東図書館、中之口図書室(以上西蒲区)、月潟図書館、白根図書館(以上南区)です。これらは新潟市との合併前はそれぞれ一市町村であった地域に、ひとつずつ建てられた館です。旧新潟市域に比べると、独立館の数や設備において非常に恵まれていると言えます。このうち白根、西川、岩室が大規模で本格的な図書館。巻、月潟、潟東が小規模館。中之口は無人・非オンライン化の図書室です。
 私は個人的に、岩室図書館の重厚な図書館らしい雰囲気が気に入りました。開館してから15年で、今回見学した中では月潟図書館と並んで古いものですが、傷みは目立たずお金をかけた建物であることがわかります。本も基準通りオーソドックスに並べてあり、私は探しやすいと思いました。しかし、一緒に行った1人は「暗い雰囲気」と言い、好みは人ぞれぞれだと思いました。
 一方、昨年開館した巻図書館はまだ本が十分に買い揃えられてないため、書架に空きがあってさびしい感じですが、ほとんどの本がピカピカに新しくて気持ちがいい。しかし、その次に新しい西川図書館も同様ですが、図書館には「古い本」も必要なのだと思いました。岩室の郷土資料コーナーを見たときに、その厚みを感じました。
 新潟市はすべての図書館(一部図書室は除く)がオンラインでつながっているので、一枚の図書館カードでどこででも貸し出し返却ができます。私たち3人は、借りるつもりで行ったのではないのに、書架の間を歩くうちについつい本を手にしてしまい、気づいたら借りまくっていました。さて、どこの図書館で一番本を借りたでしょうか? 私たち自身も意外だったのですが、月潟と潟東の2館でした。新潟市の図書館19館の中で最も小規模の2館です。
 この2館では歩きながら本がどんどん目に飛び込んできました。何倍も本があるような大きな図書館でなく、小さな図書館で本が借りやすかったのはなぜでしょうか。ひとつには小さいがゆえに全体が見渡せるということ。もうひとつは、展示が効果的になされていたこと。月潟も潟東も合併前は村で、小さな地域です。図書館員も地域の利用者の顔が見えているのです。利用者のニーズをしっかりつかんでいるという感じが、展示に現れているように思いました。
 もうひとつ、私があとから気付いた理由は、最近話題になったシーナ・アイエンガーの「選択の科学」の理論。「人は多すぎる選択肢からは選ぶことが難しい」というもの。本はいっぱいあった方が幸せ…と疑わない私でしたが、ありすぎる本の中から読みたい本と出会う確率というのは逆に低いのではないかと思いました。利用者の顔が見えている図書館員が、長年培った勘をも大事にしながら選りすぐりの本を置いてくれている小さな図書館こそ、身近な町の図書館として理想ではないかと思いました。
(2012年12月記)