2013年6月20日木曜日

カウンターは相談所

 図書館には必ず「カウンター」と呼ばれる場所があって、そこに職員がいます。ここは本を借りたり返したりする場所。スーパーのレジみたいなところ。借りたい本と貸し出しカードを出すと、バーコードをピッとやって貸し出してくれます。それだけの仕事なら、高校生のアルバイトでもできますが、図書館の職員の多くは「司書」という専門職の資格を持っています。文字通り、本を司る仕事ですから、本についてのさまざまな知識・情報をもっているのです。
 だったら、本について知りたいことを聞かない手はありません。司書の人も「ピッ」だけやっててはつまらないんですよ、実は。だれかが質問や相談に来るのを手をこまねいて待っているんです。だってそれこそが司書の本領を発揮するチャンスなんですから。
 デジタル派の私は、自分のパソコンでなんでも検索して探してしまいますが、アナログ派の人は司書をパソコン代わりにしてください。「村上春樹の書いた本で、題名にビートルズの歌のタイトルが使われてる本ってなんでしたっけ?」と聞いたら、「『ノルウェイの森』ですね。単行本と文庫版がありますが、どちらにしますか」とか答えてくれるはず。「遺産相続について知りたいんですが…」と聞けば、「法律の棚、324のあたりを見てください」と教えてくれるでしょう。
 このように図書館で質問することを、図書館界では「レファレンス」と呼んでいます。デジタル派の私でもこのレファレンスは時々利用しています。
 たとえば、星新一のショートショート(1000篇以上あります)の「おーい、でてこーい」を読みたくなりました。でも、これがどの出版社から出てるシリーズのどの巻に入っているかがわかりません。そういうとき、カウンターに行って「それが入ってる本、探してください」と頼みます。そんなのお茶の子さいさいとばかり、すぐに連絡が来ます。(この時に、分冊の文庫版を出してくるか、どでかい一巻物の全集を出してくるかで、司書の力量がわかったりもしますが。)
 またあるとき、桃太郎が腰に付けている「きびだんご」がいったいどんなものなのかが知りたくなりました。まずは図書館に、「ありったけの『桃太郎』を」とお願いしました。すると、市内中からありとあらゆる『桃太郎』の絵本や昔話集を取り揃えてくれました。いやはや、いろんな桃太郎があるもんだ…きびだんごはお菓子のようなものかと思っていたら、「弁当を作ってくれ」と桃太郎がおばあさんに頼む話もあって…。
ではそもそも「きび」とはどういうものなのか? 今度は「きびについて調べたいんですが」とお願いしました。しばらくすると「ご用意できたので来てください」と連絡があり、図書館に行くと大テーブルの一隅に本が山と積まれてありました。百科事典あり、何やら難しそうな専門書あり…でもそのひとつひとつに付箋が貼ってあり、「きび」が出ているところがすぐわかるようになっていたばかりでなく、一部の資料については司書の人が目を通して「これにはこのようなことが書いてある」というメモまでつけてありました。桃太郎についての一大論文が書けそうでした。

人生相談以外は何でも相談してよいのが図書館なのだそうです。いや、恋愛相談を受けたある司書は、その利用者にそっと一冊の詩集をお勧めしたのだそうな。図書館のカウンターを「スーパーのレジ」にしておくのはもったいない! 大いに質問したり相談したりしながら、図書館に埋もれている宝の山を手にしようではありませんか。
(2012年8月記)

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